医薬品や化粧品などの商材を取り扱う上で、気を付けないといけない「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律」通称「薬機法」について。みなさんおさえるべきポイントはきちんと理解できていますか?
最近では、薬機法で掲げられている虚偽・誇大広告の禁止違反でアフィリエイターの方が書類送検されたニュースを見聞きした方も多いのではないでしょうか?
2021年8月からは薬機法の課徴金制度が始まることから、より一層広告に対する取り締まりが厳しくなることが予想されています。
医薬品や化粧品等を取り扱う上では、切り離すことができない薬機法。「知らなかった」では済まされないため、薬機法についておさえるべきポイントをおさえることが重要となります。
薬機法とは
そもそも「薬機法」とは何なのでしょうか?
序盤にもお伝えしましたが、薬機法とは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律」です。
この法律の目的は、次のように定義されています。医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療(以下「医薬品等」という)などの製品の品質、有効性及び安全性の確保が確保され、必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする。
つまり、医薬品等を製造、販売、販売後の安全性の管理などを全般的に規制している法律となり、医薬品等にかかわる法律としては最上位の法律です。
医薬品等を取り扱うメーカーは、製造から販売まですべてを担うため薬機法についてきちんと理解する必要があります。
ですが、インフルエンサーやアフィリエイターなど、主に「販売」の部分を担う方々は、薬機法に記載されているすべてのことを理解する必要はありませんが、販売に関わる箇所については理解する必要があります。
気づかぬうちに薬機法違反として取り締まられることがないよう、きちんと薬機法について理解することが大切です。
次から、薬機法の中身について少し説明します。
医薬品等とは何を指すのか?
薬機法の目的部分に、医薬品等と記載がありますが、実際のところこれらは何を指すのでしょうか?
薬機法では、医薬品や医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療を総称して「医薬品等」としています。一つ一つについては、次のように定義されています。
医薬品:病気の診断、予防、治療に用いられるものを指し、医療用医薬品(処方箋による指示が必要なものとそれ以外)と一般人が自らの判断で使用することができる一般用医薬品の2種類に分けられる。
医薬部外品:人体に対する作用が緩和なもので医療機器でないもの。厚生労働大臣の指定するもの。育毛剤、染毛剤、薬用化粧品のほか、薬機法改正によりそれまで医薬品に分類されていたビタミン類や尿素クリーム類が新たに加わった。
最近話題のシワ改善化粧品や、根強い人気の美白化粧品は、この医薬部外品のカテゴリーに分類されます。
化粧品:人体に対する作用が緩和なもので、皮膚、髪、爪のお手入れや保護、着色、賦香を目的として用いられるもの。
一般的にみなさんが想像する化粧品はこちらに分類されます。
医療機器:病気の診断、予防、治療に用いられる機械機器。MRIやペースメーカーからメスやピンセット、コンタクトレンズなど幅広い製品があり、リスクにより分類されます。
一つ一つ定義づけはされていますが、使用する目的に応じて何に該当するかが変わる、ということになります。
これをもう少し具体的に説明しますと、ペットボトルに入った「ただの井戸水」があります。「この水を飲めばガンを治すことができます。」の場合、この水を使用する目的が「ガンの治療」になり、この水は「医薬品」に該当し、医薬品としての規制を受けることとなります。
一方で、「この水を肌に塗布すれば、保湿できます。」の場合、この水を使用する目的が「肌のお手入れ」となり、この水は「化粧品」に該当し、化粧品としての規制を受けることになります。
また、「この水を飲むことができます」の場合、この水を使用する目的が「飲むこと」になり、この水は「食品」に該当し、食品としての規制を受けることとなります。
「使用する目的」によって何に該当するかが変わってくるため、広告を行う上でもこの「使用目的」を誤って広告をしてはならないことになります。
消費者にとって正しく医薬品等を使用してもらうために、薬機法では広告について次のように定めているため、ご説明します。
薬機法と広告の関係について
医薬品等の広告については以下のように定められています。
虚偽・誇大広告等の禁止(薬機法第66条の1)
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
承認前の医薬品(未承認医薬品)の広告の禁止(薬機法第68条)
何人も、医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
これを簡単にまとめますと、
- 明示的・暗示的にかかわらず、嘘や偽りを言ってはならない
- 承認(もしくは認証)を受けていない医薬品、医療機器について広告を謳ってはいけない
広告を行う上でこの2点を守る必要があり、これらが守られていないと薬機法違反としてみなされることになります。
広告を行う上で守らなければいけないことを理解したところで、どのようなものがこの「広告」の該当するのかを説明します。
薬機法上における広告とは
薬機法における広告とは、薬事法における医薬品等の広告の該当性について(医薬監第148号)により、以下のように定められています。
- 顧客を誘因する(顧客の購入意欲を亢進させる)意図が明確であること
- 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
- 一般人が認知できる状態であること
これら3つの要件を満たす場合に「広告」に該当します。
薬機法上の広告について、薬機法の解釈や具体的に守るべき事項を記載した「医薬品等適正広告基準」があります。
この基準では、医薬品等の広告が虚偽、誇大にわたらないようにするとともにその適正を図ることを目的としています。
この基準において、薬機法の対象となる広告については次のように定められています。
「新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、ウェブサイト及びソーシャル・ネットワーキング・サービス等のすべての媒体における広告を対象とする」
具体的にどのようなものが「広告」に該当するかといいますと、紙媒体や商品のパッケージ、動画広告、CM広告など、不特定多数の消費者が目にするものであり、上記に挙げた広告の3要件を満たすものが広告とされ、ブログやウェブサイトも広告のひとつとしてみなされることとなります。
また、広告を依頼した販売者、広告を作成した広告代理店、掲載メディア、PRで活躍するインフルエンサーさんやアフィリエイターさんを含め、広告に関わった方全ての人が薬機法の広告規制の対象となります。
薬機法のおさらい
薬機法の基本的な考え方や、広告については理解していただけたでしょうか?
最後に、薬機法についておさえておきたいポイントについておさらいします。
薬機法とは「医薬品や化粧品の製品や品質、効果、安全性の確保と、その製品を使用したことによる保健衛生上の危害発生、拡大の防止を図る」ための法律です。
医薬品等を正しく使用してもらうために、広告については次のように定められています。
- はっきり言う、言わないにかかわらず、嘘や偽りを言ってはならない
- 未承認医薬品、医療機器について広告を謳ってはいけない
また、広告に該当する3要件は
- 顧客を誘因する意図が明確であること
- 商品名が明らかにされていること
- 一般人が認知できる状態であること
であり、この3つがそろった場合にはじめて広告に該当します。
アフィリエイト記事はほとんどの場合において、この3要件を満たすことになり、広告に該当します。
他にも、薬機法について気を付けなければならないことは、数多くあります。今回は薬機法の目的と、広告との関係性について少しでも理解を深められると嬉しいです。